太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「そーいや、麻依さん達はまだじゃないスか?挨拶」
という翔琉くんの声で我に返った。
「そうでした!ごめんね、ひよりん」
彼女に向かって手を合わせる。
「いえ、高見さんに乗せられちゃいましたもんね、うふふ」
とひよりんは笑ってくれた。優しいなぁ。
そしてまた佐伯さんに体を向けた。
「最後にフロントになりますが、私がチーフの羽倉 麻依です。年齢は…まぁいいですよね」
「28だもんな、若い若い」
「渡瀬さん、おだまりください。…で、ここのフロントは館内についてのまとめ役になります。支配人には関わっていただくことが多くなりますので、宜しくお願いいたします」
一礼すると、続いてひよりんが挨拶を始めた。
「松島 陽依です。麻依先輩にお世話になりながらまだまだ修行中です。どうぞ宜しくお願いいたします」
ひよりんもまた綺麗に一礼する。
「今日出勤していない給仕パートさんは追ってご紹介したいと思います。今日のところは以上で終わります」ペコリ
ふぅ、一仕事終わり、っと。
すると、中沢支配人がにこやかに笑って私を見た。
「麻依さん、ありがとね。やはり麻依さんに頼んでよかったよ」
「いえ…ただイジられて終わっただけで」
滅相もない、と平手を振る。
「麻依ちゃんは裏バンだからよ」
「だから渡瀬さん、私達の世代は『裏バン』知りませんから」
「だから裏バンは裏で操る番長だって」
「ですから、そもそも番長じゃないですからー」
「ハハハ、まぁ番長ではないけど、影の支配人てところかな」
「支配人まで何を言うんですか!…佐伯さん、違いますからね、誤解しないで下さいね」
「ソレイユの力関係がわかりました」
フ、と緩めた目元で私を見て、小さく笑った。
ドクン!
…て、胸を鳴らすのではなく。
「違います…それ、わかってないです…」
とりあえず否定しとかなきゃ。
でも…
こんな冗談ぽいことも言うんだ。
ちょっと意外。
すると支配人が口を開いた。
「皆さん、私は支配人として皆さんと共に働いてきましたが、私が皆さんをまとめていたわけではなく、皆さん一人一人が協力してくれていたおかげでソレイユはまとまっていたんだと、私は思っています。これから佐伯くんが支配人となっても、佐伯くんがみんなをまとめるわけじゃないんだ。今までと同じようにみんなが協力してスタッフ一丸でソレイユを作っていって欲しいと思います。…それでは朝礼を終わります。今日は施行がないので、それぞれの仕事をお願いしますね」
「「ハイ!」」
じゃあまたね、と皆ぞろぞろ自分の持ち場へ返っていき、私とひよりんもフロントへ戻った。