太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

「…本当に不安にさせてゴメン」
もう一度、ぎゅう…と抱きしめた。


「俺も思ってること考えてること全部言うから…聞いてくれる?」

麻依の顔を上げて、目を見て優しく言うと、少し涙が滲んだ瞳で、ん、と答えた。


「麻依はさ、可愛い女性がトラウマって思ってるけど、違うんだよ。…ちょっと耳が痛いかもしれないけど聞いて?…俺はそいつじゃないからほんとのところはわからないけど…そいつは、そいつの理想像を麻依に押し付けて求めようとしたんじゃないかな。本当の麻依の良さを無視して。それでそいつは別の女にそれを求めただけなんだ。…だから麻依がダメな訳じゃないんだよ。もっと簡単に言えば、麻依はそいつとは縁がなかったってこと。それで、俺と縁があったってこと!…わかる?」


「…私がダメなんじゃ…ない?」

「うん。だって、麻依は俺にとっては最高の女だよ?俺は、倒れた時に一生懸命看病してくれたり、休みの日とか俺が残業の日にご飯を作りに来てくれたり、真面目で丁寧で尊敬できる仕事をする麻依が大好きなんだよ?ふ、まぁ欲を言えばもっと甘えてくれてもいいとは思うけど?…ね?」

俺をじっと見る麻依の頬を撫でる。


「甘えて、って…私、充分甘えてるよ?」

「そうだなー、『抱きしめて』とか『ちゅーして』とかたくさん言ってくれたらすげぇ甘やかしてイチャイチャできるのに……ってそれは俺が甘えたいのか?んん?」

自分で言ってて、あれ?ん?なんて思ってたら、麻依がふふっ、と可愛く笑った。

あー、やべぇ、可愛い…キスしたい…

でもまだ伝えなきゃならないことがあるからもう少し我慢。


「…あと、ユリナにバレたくなかったのは、麻依に危害が及ぶのを避けたかったからなんだ」

「危害って…」

「あいつさ、あんな風にか弱い女っぽく見せてるけど、俺が知る昔のあいつは自分の思い通りにならないと何をしでかすかわからなくて、正直ヤバい奴だったんだよ。…10年も会ってないし、今のあいつがどんな奴かを知らないからこそ、もし麻依が彼女だとわかったら、俺が見てないところでどんな攻撃を仕掛けてくるかわからなくて」

「そうだったんだ…そんな風には見えないけど」

「実は今日、待ち合わせ場所に行ったら、いきなりマカロン出されて『食え』って言われたんだよ…すげぇ薔薇の匂いしかしなくて不味かったんだけど、それがまさかの催淫剤入りで」

「サイインザイ?…って何?」

「あぁ、媚薬っていうか。要はエッチをしたくなる薬ってこと」

「えっ?…それ食べたの?…諒くん、ユリナさんとは…何も…?」

「するわけないじゃん!体以前にそんな気すら全然起こらなかったし。むしろベタベタ触られて鳥肌立ったくらい」

うへぇ…思い出したくもない…


「そうなんだ…よかった…」

麻依が俺の両腕を優しく掴んで、ほぅ…と息を吐いた。
その安心した表情に俺もホッとする。


「あっ…でも体は大丈夫なの?体調とか変じゃない?めまいとかだるいとかお腹痛いとかはない?」

変な薬入りマカロンを食べてしまった俺を、麻依が真剣に心配してくれている。


「ん…大丈夫だけど大丈夫じゃない、かな」
なんて、曖昧に。でも正直に。


「え…どういうこと?どこかヘンなの?もうお休みする?」


どこかヘン…
うーん…その質問は色々と答えにくい…と思い、苦笑する。
その答えはもう少し待ってて。


「…諒くん?」

「あとは…俺達まだキス止まりってことだったよね?」


「…ん…」

あっ、赤い顔して俯いちゃった。

やっぱそうだよな、女の人からなんて言い出しにくいよな…
ほんと俺って女心とかなんもわかってねーな…

ホントにゴメン、麻依…


「あのさ…キス止まりなのは…若い女がいいとか麻依に魅力がなくて手を出さないとかじゃないから」

「…えっ?」


「俺さ、麻依が俺に惚れてくれたら麻依の全部が欲しいって言ったし、そう思ってたけど、よくよく考えたら麻依からそれを言い出させるなんておかしいよな」

「…?」


「それは俺が引っ張ってあげなきゃなのに、麻依任せにさせた」


麻依の頭に手を乗せて優しく大きく撫でる。

「俺が……がっつきすぎたら麻依に体目的って思われたりしないかとか考えちゃって…麻依に嫌われるのがこわくて麻依任せにした……ごめん」

「そんなこと…!違うよ、諒くんは悪くないよ。私が…その…言うタイミングがわからなくて…」

「だから、そうさせた俺が悪いんだって」

「でも…」

俺は麻依を胸にグイと引き寄せた。

「麻依……俺ずっと我慢してたよ。…抱きしめてる時も、キスしてる時も…このまま麻依を俺のものにしたいってずっと思ってた。俺が強気で迫ったりお願いしたら麻依は許してくれるかも…って思うこともあったけど…俺は麻依にも俺を求めてほしかったんだ、って気付いたんだ」

「諒くん…」

「俺が引っ張らなきゃ、って言っておきながら、結局麻依任せにしちゃってるんだけど…でも俺は麻依に求めてほしいと思ってる」

そう正直に言うと、麻依が俺をまっすぐに見た。

「私ね、諒くんが好きだよ。一緒にいると何をしていても楽しいし、嬉しいし、落ち着くし。抱きしめられるのも…キスされるのも、いつも嬉しくてドキドキしてる。それでずっと穏やかに過ごしてたけど」


「ん?…けど?」


「うん…ユリナさんの一件があって…諒くんが私の中でこんなにおっきな存在になってたんだって…気付いたの。諒くんが私から離れていくのが…本当にこわかった…それこそ元カレの浮気の時の比じゃなくて…すごく…苦しかった。誰かを好きになってこんなに苦しくなるのは初めてで…私はこんなにも諒くんが好きで…いつも好きって言ってくれてる諒くんに私は甘えてたんだ…って…」


麻依の心の声がやっと聞けた…

麻依も…
こんなに俺を好きでいてくれているんだ…

嬉しくて嬉しくて、麻依をぎゅうぎゅうと抱きしめた。


「麻依…すげぇ嬉しい…嬉しすぎる!俺ばっか好きなんじゃないかとかちょっと思うこともあったから、すげぇ嬉しい…あぁ…麻依が愛しすぎる…」

「諒くん…私も好きだよ、諒くんが大好き…愛しいっていうのも…すごくわかる」

「ん…」

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