太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「いや~、やっと来れたわ~」

「お疲れ様です、福田さん」

「おぅ佐伯、先月ぶり」

11月に入り、ようやく都合がついた福田さんがこっちに来てくれた。

ソレイユスタッフの行きつけの店となっている洋風居酒屋に、福田さんと俺達4人が集まる。

「で、何なに?何であの女と横田が?」

ワクワクしてる福田さんに俺はその経緯を詳しく説明した。

「ふぅん…やっぱあの女、只者じゃなかったな…てか、ヤバいもん同士でマジでお似合いなのな。で、そいつらはどうなったんだ?ってそこまでは知らねぇか。ま、ヤることヤって、はいサヨナラだろうけど」

「それが、びっくりですよ」

「何だ?」

「つい先週、横田さんが麻依と俺に会いにソレイユに来てですね」

「…おぅ」

「麻依にはきちんと謝って、俺にはありがとう、って」

「…あいつが謝罪とか信じられないけどまぁそれはいいとして、何でお前にありがとうなんだ?」

「ユリナと出逢わせてくれたから、だそうで…」

「へぇ…」

「なんか結婚するみたいで、その2人」

「ハァ!?マジか!」

「えぇ、実はその時ユリナも来ていて、横田さんが麻依と俺に謝罪してからユリナを呼んで」

「修羅場らなかったんか!?」

「もうびっくりですよ。あのユリナから毒気が抜けてて。憑き物が取れたって言ってもいいくらい」

「はぁ?」

「ほんとに、あの時のユリナさんじゃなくて、普通の可愛い女性だったの。その時に私が諒の彼女だって知って『ご迷惑をおかけしてすみませんでした』ってほんとに申し訳なさそうに謝ってくれたんだよ?」

「それに、横田さんも最近仕事に精を出しているらしくて、社員が気味悪がってます」
思い出してクッと笑ってしまった。

「なんだそれ」

「つまり、毒を以て毒を制したワケですよぉ」
陽依さんが人差し指を立てて言う。

「そーそー。まぁ丸く収まったっつーか、Win-Winつーことっス」

「へー…なんかスゲー斜め上の展開で驚いたけど、まぁ高見の言うとおりWin-Winならいんじゃねぇの?」

ゴクリゴクリとビールを飲んだ福田さんが「あっ!そういやッ」とジョッキを置いた。

「羽倉、さっき佐伯のこと諒って言ってなかったか!?」

「うん、諒って呼んでるけど」

「うわぁ、羽倉が諒って呼び捨てにぃぃ……って、そういえばお前らみんなで名前で呼んでんのな。じゃあ俺の事も名前で呼べよ、もっと親近感湧くぜ?」

「えっと、福田さんのお名前…私、知らないんですけどぉ」
「そいや俺もっス」
「あ、俺も…」

「何だよみんな、しょうがねぇなぁ…羽倉、みんなに教えてやってくれ!俺の名前!」

ニヤニヤしながら俺を見んなよ!
クソ…同期仲良しアピールとか…ムカつく。

「福田くんの名前?あぁ、確か〝とも〞…なんとかだったよね?」

「はぁ!?つかお前、覚えてねぇの!?」

クッ。
プチ吹いた俺を福田さんがキッと睨んできた。

「えっと、確か〝知る〞の下に〝日〞って書く〝智(とも)〞って字があったよね?だから〝とも〞なんとかじゃなかったっけ」

「…さとし」

「え?」

「俺の名前『ふくだ さとし』っていうんだけど?」


ぶふぉッ!
翔琉がビールを吹いた。

「ああぁ、そうだった…かも?…ごめん…」

しどろもどろで俯いて頭を掻く麻依を見て、我慢してた俺も、ぶっはあぁ!と吹き出してしまった。

陽依さんは俯いて肩を震わせ吹き出すのを堪えている。偉いな。

「福田さ、あっ智さん、ク…ドンマイです…ククッ」
俺は肩を震わせながら智さんの背中を叩いた。

「もうっ、そんな羽倉なんてプンだッ!今日は諒の家に泊まって諒のベッドに寝るんだもーんだ!いーだろー!へっへーんだ!」

「俺…そのベッドで麻依を抱いてますけど、いいんですか?」

…あっ、智さんがムンクの叫びになった…

「いやあぁぁぁぁ…俺の諒があぁぁぁぁ…」

「俺、智さんのじゃないです。麻依のです」

「諒さん…智さんが灰になってますよぉ?」

翔琉はまだ笑いが収まらないようで「笑いすぎて…腹痛ぇ…クックッ…」て陽依さんにもたれ掛かったままだ。

その様子から、翔琉も結構甘えんぼさんなのかなーなんて思ったり。
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