本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
修平は必要な説明をしたつもりでも、心にゆとりがない状態では半分も飲み込めないとも教えられた。

「だからこそ、いたわりや安心感を与える声かけが必要なんです。もちろん患者さんとご家族に寄り添うのは私たち看護師の仕事ですけど、先生からもお願いします。医師に言われると大きな不安解消に繋がるんです。思いを表出しやすいような柔らかい雰囲気も心がけてください。生嶋先生は少し怖いです」

「そうか......」

指示形態として医師は看護師の上に立つので、いち看護師がこうして医師に意見するのは珍しく、きっと言いにくかったことだろう。

修平の気分を害したら今後の業務に差し支えるという思いもあるのか、香奈の顔は強ばっていた。

それでも言わなければと勇気を振り絞っている様子に修平は感心した。

指摘にも納得し今後は患者や家族の想いを汲み取る努力をしようと思ったが、それは優しさからではなく、あくまで仕事としてである。

元来他人に興味が薄い性格をしているので、寄り添うという感覚がうまく理解できなかった。

「自分では気づけなかった点だ。言ってくれてありがとう。改善を約束する」
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