本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
修平が愛想に乏しい性格をしているのは相手もわかっているので不愉快そうにはされないが、この病院に勤め始めた二年前には眉をひそめられたり、注意されたりしたこともあった。

しかし修平の態度は変わらない。

それは他者への関心が薄いからであり、生い立ちゆえのことだ。

修平が交通事故で一度に両親を失ったのは三歳の時で、写真の中にいる両親の顔しか覚えていない。

その後は親戚をたらい回しにされて育ち、信頼や愛着を深める養育者がいなかった。

それが他人に興味の持てない今の自分を形成しているのだと自己分析している。

中学生の時の担任教師から可哀想だと哀れまれたことがあったが、修平は首を傾げた。

自分を哀れに思ったことはなく、うちに来られても迷惑だと親戚に言われても怒りや悲しみを感じない。

心が発達不全なのだろうと思う気持ちもまた、他人事のように冷めていた。

修平の席は医局の奥側にある。

乱雑に書類やファイルが積まれた隣のデスクと違い、机上にはノートパソコンしか置いていない。

仕事を溜めるが嫌なので、書かねばならない書類は受けたその日のうちに処理している。
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