本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
学会誌に載せる論文を書くのも読むのもパソコンなので、いつもスッキリしていた。

椅子に腰を下ろす前に隣の無人のデスクに放置されている菓子パンの空袋が目につき、空腹を思い出した。

今日は昼休憩を取れなかったので自宅を出てから水しか口にしていない。

真琴が作ってくれた弁当は医局の冷蔵庫の中で、それを取りに行ってから改めて席に座った。

シンプルな白い弁当箱の蓋を開けると、色とりどりで美味しそうな総菜が美しく詰められていた。

以前、修平が『腹持ちしてなおかつ胃に負担が少なく、眠気がささない弁当』が欲しいと言ったのを真琴は覚えてくれていて、主食はもち米を混ぜた小さな俵形おむすびが三つと少なく、その分総菜はレンコンと海老真薯の揚げ物に太刀魚の甘酢餡かけ、ホタテとアスパラの炒め物など六種類もあり、彩りに添えられたミニトマトやキュウリは飾り切りにされていた。

料理はお手の物とは言え、早朝の仕事に出かける前に作るのは大変だったろうと修平は感謝する。

(いただきます)

心の中で呟いて、太刀魚の甘酢餡かけから口にした。

甘さと酸味、塩加減のバランスがちょうどよく、激務の体に美味しさが染み渡る。
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