本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
温め直していなくても、心の中まで温まる心地がした。

「うまい......」

思わず唸ったら、笑いを含んだ耳障りな声をかけられた。

「そりゃうまいだろ。愛妻弁当だもんな。しかもプロだし、まんぷくちゃんを嫁さんにして正解だな」

隣の席に座ったのは関根で、すでに置き場のないほど物であふれた机上にさらに書類をのせていた。

(ゆっくり味わえない)

関根はやたらと修平に絡んでくる。

他の医師たちは修平の愛想のなさを受け入れ、距離を縮めようとするのを早々に諦めてくれたというのに関根は違った。

おどけた調子で、「おかずの品数は愛情のバロメーター。お前、めちゃくちゃ愛されてるな」などとからかってくる。

「新婚生活、どうだ? 楽しいか?」

ミニトマトを口に放り込み、無言を貫こうとした修平だが――。

「眉間に皺が寄ってるぞ。まんぷくちゃんに不満があるのか?」

不愉快にさせているのは関根なのに真琴のせいにしようとするから、これにはたまらず口を開く。

「生活時間がずれているんです。不満が生じるほどの関わりはありません」

「お前、それはまずいだろ」
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