本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
関根が大げさなほど驚いた顔をして、それから椅子を修平の方に寄せた。

すれ違いは主な離婚原因のひとつだと言われ、修平は思わず関根と視線を合わせた。

業務以外の話題で修平が反応するのは初めてなので、関根は気をよくしたようだ。

既婚者の先輩として意気揚々と続ける。

「いいか、女っていうのは構ってやらないと愛が薄れただの、他に女ができただのと勝手な憶測ですねるぞ」

「そうなんですか」

「ああ。俺も妻に色々言われた。夜勤と残業で数日帰れなかったら浮気を疑われ、離婚危機もあったな」

「どうやって回避したんですか?」

ニッと口の端を上げた関根が、「デートだよ」と人差し指を立てる。

離婚危機があって以降、毎月一日は必ず子供を預け、夫婦ふたりだけでデートしているそうだ。

「その日だけは妻をお姫様扱いしているのよ。三ツ星レストランでのランチに、ブランドの洋服やバッグ、ジュエリーに化粧品のプレゼント。コンサートやミュージカルに行きたいと言われたら付き合い、有名洋菓子店のスイーツを求められたら妻をカフェで待たせてひとりで長蛇の列に並ぶ」
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