本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
炎天下の行列を想像した修平が思わず顔をしかめたら、関根が同情を求めるかのように大げさなため息をついた。

「妻を満足させるために俺は頑張っている。そう思わないか?」

「そうですね。真似できません」

「まんぷくちゃんは、おねだりしてこないのか。お前たちはどんなデートをしているんだ?」

すれ違いの生活といっても、結婚前を含めたら何度かデートをしているはずだと関根は思っているようだ。

しかし修平は真琴に限らず、女性を誘って出かけたことはない。

過去に交際した女性はひとりいて、医学生の時の同期で同じ専攻の美人だった。

恋愛には全く興味がなかったが講義では隣の席に座られ、一緒に勉強しようと修平のひとり暮らしのアパートに押しかけてきた。

気づけばいつも行動をともにしていて、ゼミの講師から交際しているのかと問われた時に彼女が『そうです』と答えたから修平も恋人関係にあると思うようになった。

けれども修平が彼女をデートに誘ったことは一度もなく、求められて食事や映画に出かけても退屈を感じるだけだ。
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