本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
そんな日々が半年ほど続いたある日、彼女に愛しているか問われたので『たぶん愛していない』と答えたら破局となった。

別れた後に寂しさや後悔を感じなかったので、愛情がないというのは間違っていなかったのだろう。

過去を含めて女性をデートに誘った経験はないと打ち明けたら、関根が目をむいた。

「マジか!」

医局には二十人ほどの医師や医学生の姿があるのに、大声を出されて注目を浴びてしまう。

修平が迷惑げに眉をひそめたら、関根が慌てて声を潜めた。

「お前、それはまずいだろ。そのうち嫁さんの不満が爆発するぞ」

不満と言われて、連絡通路での香奈との会話を思いだした。

真琴が幼馴染にすれ違いの結婚生活だと話していたのは、不満があるからに違いないと疑惑を強める。

時間との勝負の難手術をしていても焦ることは一切ないのに、今の修平の胸は嫌な予感が膨らんで心臓がうるさく鳴り立てた。

(なんとか時間を作ってデートしなければ)

「どこへ連れて行けばいいでしょう?」

いつも頼られる方の修平が関根に頼みごとをするのは初めてだ。

「へぇ」
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