本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
心臓を波打たせた真琴に修平が指示をする。

「いい。真琴は出かける支度をしてくれ。俺は軽くシャワーを浴びて着替える。急ごう」

「あの、無理してでかけなくてもいいんじゃないですか?」

「なぜ? 真琴は俺とデートをしたくない?」

修平の口調はいつも通り淡白で気分を害している様子はないが、真琴は焦って首を横に振った。

本音を言えば休んでもらいたい気持ちが強く、彼の疲労を気にしながらのデートは楽しめるだろうかと疑問にも思う。

けれども忙しい中で真琴の休日に合わせてくれた彼に、行きたくないとは言えなかった。

「すぐに準備します」

微笑んでごまかした真琴は着替えのために自室に入る。

クローゼットを開けて洋服を選んでいると、バスルームからシャワーの音が微かに聞こえた。

(どこへ行くんだろう。なるべく早く切り上げて家でゆっくりしてもらいたい)



慌ただしく自宅を出てから五時間ほどが経ち――。

(こんな贅沢をさせてもらっていいのかな)

スイートルームの開口の広い窓には、東京湾のまばゆい夜景がゆっくりと流れている。

修平が前もってディナークルーズを予約していたのだ。
< 116 / 211 >

この作品をシェア

pagetop