本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「そうですか......」

(普通なんだ。それなら家で作る意味はないか)

同じ感想を持てずに残念に思ったが、修平がわずかに目を細めてわかりにくい微笑を浮かべた。

「真琴の手料理が一番舌に合う。いつも美味しい料理をありがとう」

「私にはそれくらいしかできないので......」

生活費のすべては修平が出してくれていて、せめて家事で貢献したいと思っている。

しかしその思いを超えて修平の心と腹を美味しい料理で満たしたいという気持ちが膨らんでいるため、今の言葉はなによりのご褒美な気がした。

喜びに鼓動が速度を上げ、頬が熱くなる。

「このお料理、アレンジして家でも作ってみようと思うんですけど、どうでしょう? 紫いものソースは赤ワインじゃなく、日本酒と醤油を加えて和風に。山葵をのせてもいいかもしれません」

修平の好みに合わせての提案に、彼の口角が微かに上がる。

「それはうまそうだ。楽しみにしている」

「はい! ホタテと甘海老をゼリー寄せにした前菜も美味しかったですよね。あれも作ります。あ、でも上にのっていたキャビアがいいアクセントになっていましたよね。とびっこで代用するか......」
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