本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
まるで近づく者を拒んでいるような淡白で少々冷たい印象のポーカーフェイスではなく、完全に気を抜いて半開きになった口元にあどけなさがある。

引き寄せられるようにソファ前のラグに膝をつき、間近でじっくりと顔を眺めてしまう。

(修平さんはサイボーグじゃないよ。いつも神経のすり減るような手術を任されて、業務時間も長い。疲れて当然だよね。私には絶対にできない仕事を頑張っていて、すごいと思う)

尊敬の気持ちが湧き上がると同時に真琴の眉尻が下がる。

無理して出かけないで自宅でゆっくりしてほしかったという気持ちが再燃していた。

「どうして......」

急にデートしようなどと言いだした理由がわからず、寝ている彼に小声で問いかけた。

すると熟睡しているように見えた彼がパッと目を開け、拳五つ分ほどの距離で交わった視線に驚いた真琴は体勢を崩した。

「キャッ」

「大丈夫?」

咄嗟に身を起こした彼が腕を掴んで支えてくれたため、ガラスの天板の縁に後頭部を打ちつけずにすんだ。

醜態をさらした恥ずかしさや寝顔を盗み見ていた気まずさで、真琴の鼓動が加速した。
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