本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
すると引き寄せられ、唇に軽いキスをもらった。

目を丸くして口に手をあてた真琴を、修平がわずかに口角を上げてじっと見ている。

彼とはこれまでに三回、抱き合って眠る夜を過ごしており、このくらいで照れるのはおかしいかもしれないが、不意打ちに心臓が波打ち頬が熱くなった。

「もしかして、これも関根先生からのアドバイスですか?」

以前の豪華デートを思い出して問いかけたら、「いや」と否定された。

「したくなったからしただけ。嫌だった?」

「嫌じゃないです。少し驚きましたけど嬉し......あっ、その」

「真琴、時間」

「ああっ! 遅刻しそう。行ってきます」

今度こそ玄関を出て、足音に気をつけながらマンションの廊下を走る。

エレベーターを急かす気持ちで待ちつつも、頬は自然と緩んだ。

(行ってらっしゃいのキスをもらってしまった。修平さんはそういう甘いこともするんだ。新発見が嬉しい)

日常的な触れ合いや心の繋がりが欲しいと前に真琴が言ったから、すれ違いの生活の中でも彼は会話を増やそうと努力してくれている。

その姿勢に真琴の胸はじんわりと温められ、修平に感謝するとともに今日も一日頑張ろうと張り切った。

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