本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「香奈が修平さんを褒めていましたよ。最近は患者さんの話を親身になって聞いてくれるようになったって嬉しそうに......あっ、すみません」

悪口でなくても陰で話されると嫌かもしれないと焦ったが、修平は気にしていない様子だ。

「ああ、それか。杉浦さんから注意を受けて改善したが、それは仕事だから。親身になれているとは思えない。他人に興味が湧かないのは今までと同じだ」

真琴は溶き卵を鍋に流し込みつつ眉尻を下げた。

家庭の愛情に恵まれなかった幼少期の彼を想像したら涙が出そうなほどに悲しいのに、当の本人はつらさを感じないという。

それがさらに真琴の胸を締めつけた。

(心が発達不全。それって感情が薄いってこと? 表情に出にくいけど、修平さんは色々と感じていそうに思うけど......)

守也に婚約解消された時と愛華に絡まれた時の二度、真琴は修平に助けられている。

そこには真琴を守ろうとする彼の心があったはずで、本当に他人に興味がないのなら介入しなかっただろうし、真琴と結婚したいとも思わなかっただろう。

「まぁ、こんなところだ」

修平が話を締めくくると、ちょうど親子丼ができあがった。
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