本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「驚いたんだ。弁当販売の仕事になぜそこまで入れ込めるのかわからず不思議に思った」

修平は仕事に打ち込む真琴をいつも尊重してくれており、軽視しての言葉でないのはわかっている。

「俺が医師を目指したのは、学費や生活費の援助を得られてひとりで生きていくのに都合がよかったという理由の他にもうひとつある。退屈しなそうだと思ったからだ」

修平は幼い頃から同年代の子供よりなんでも上手にできたそうだ。

IQを調べたら天才の域に入る数値で、そのため学校の授業は簡単すぎていつも退屈していた。

勉強は少しも苦に思わないが、退屈は苦手だと彼は言う。

日進月歩の医学は学びつくせるものではなく、外科医ならば仕事に忙殺される生活ができるだろうと期待してその道に進んだらしい。

結婚前は休日も暇潰しに仕事をしていたそうだ。

(仕事が好きではないのに忙しく働いていたいだなんて。私には無理。適度に休まないと疲れが溜まって、仕事をする楽しさもわからなくなりそう)

「それでも退屈する時は結構ある」

修平が湯のみに口をつけながら、諦めたような無気力な目をして言った。
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