本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
ヒントを得ようとして少年時代の修平を想像していた。

退屈そうな顔で長い授業時間を無気力に過ごし、休み時間に級友とふざけ合うこともない。

転校が多かったせいで友達ができなかったと言っていたが、天才ゆえに同年代の子供と話が合わなかったのも一因だろう。

なんでも簡単にできてしまう優れた頭脳は羨ましいけれど、それと引き換えに努力して成しとげる喜びや感動を味わえないのは寂しい気がした。

退屈が苦手だと言っていたが、そういう喜びがないからなにをしてもつまらなく感じるのではないだろうか。

(せめて一緒に過ごす休日くらい退屈しないでもらいたい。今日は私が修平さんを楽しませてみせる!)

食器を片づけた修平が戻ってきて真琴の横に立った。

「午後はどうする? 日用品の買い物は?」

「不足しているものはないです。それより他に行きたい場所があるので付き合ってください」

なにかを企んでいるようにニンマリと口角を上げた真琴に、修平は怪訝そうにしつつも頷いた。



その日、修平をあちこち連れ回した真琴は、二十時を過ぎてから隣町にあるボーリング場にやってきた。
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