本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
徐々に上達する喜びや、目標をクリアした時の達成感や感動、仲間と協力する楽しさ、そういったものを修平に味わってもらいたいと思ってボーリングに誘ったのだ。

「わかった」

今の時点では少しも楽しそうではない修平が、椅子に腰かけて長い足を組んだ。

白いボタンダウンシャツに黒いストレートパンツという目立たない色調の服装でも、見目好い彼はどうしても女性の目を引きつけてしまうようだ。

ふたつ離れたレーンに女子大生風の四人組がいて、チラチラと修平を見てはひそめきれない興奮した声をもらしている。

(修平さんが女性にモテるのは知っているもの。気にしないようにしよう)

順番は真琴からで、青いボールを持つと緊張しながら投球位置に着く。

女子大生たちが気になったせいでも着ているロングカーディガンが邪魔だったせいでもなく、おそらくは元からの運動神経のなさが原因で一投目はレーン脇の溝に流れてガターとなってしまった。

恥ずかしさを苦笑してごまかし振り向いたら、真顔の修平がスクッと立ち上がった。

「修平さんの番はまだですよ。私の二投目が――」

「わかっている」
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