本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
戻ってきた青いボールを真琴に持たせた修平は、投球位置に誘導すると真琴の体の角度をやや右向きに修正した。

それからピンの上の壁に掲げられた企業広告を指さす。

「広告のRの文字を見ながら、さっきと同じように投げてごらん」

「は、はい」

修平は椅子に戻り、真琴は教えられた通りに二投目を放つ。

するとカコンと小気味いい音が響き、六本を倒すことができた。

「あたりました!」

笑顔で振り向いた真琴に、彼はそっけなく頷いた。

「ボーリング初心者の修平さんが、どうして私に教えられるんですか?」

興奮気味に問いかけたら、立ち上がって自分の白いボールを手にした彼が関心の薄そうな顔で答える。

「一投目のボールが溝に落ちたのは立ち位置から十一メートルほどの地点。曲がった分の角度を計算してあらかじめ右を向くことで、ボールがピンにあたるようにしただけだ。あと数回投げてボールやレーンの特徴、真琴の投げる癖も計算に入れたら、ストライクを出せると思う。する?」

(天才は計算してボーリングをするものなのね......)

「い、いえ、そこまでは。遊びなので楽しくいきましょう」

「わかった」
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