本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
今日の外出の目的は修平を楽しませることにあり、真琴なりに知恵を絞って計画した。

ボーリング場の前に訪れたのは大人のピアノ教室と陶芸教室で、それぞれ一時間の体験レッスンに参加した。

修平も真琴も未経験者なので、上達する喜びを一緒に味わおうと思っていたのに――。

『ショパンを弾ける初心者は初めてです。すごい才能をお持ちですね。どうしてピアニストを目指さなかったんですか。もったいない』

指の動きと楽譜の読み方を教わって簡単な童謡を二曲弾いた後に修平がサラッとショパンの子犬のワルツを弾いてしまったから、若い女性のピアノ講師も真琴も目を丸くして驚いた。

陶芸教室でも修平は天才ぶりを発揮して商品にできそうな急須と湯のみを難なく制作し、『玄人が冷やかしに来たのか?』と堅物そうな男性講師に睨まれてしまった。

真琴はというと、ピアノ教室では日曜放送の国民的アニメのオープニング曲をたどたどしく弾けるようになり、陶芸教室では手びねりで不格好な茶碗をなんとか作り上げ、ひとりだけ一歩上達の喜びを味わった。

自分が楽しんでどうするのかと心の中で指摘しつつ、つまらなそうな修平の横顔を気にしていたのだ。
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