本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
こっそりと諦めのため息をついた後は、半ばやけになって無理やり笑顔を浮かべた。

(こうなったら私だけでも楽しもう。修平さんとの貴重なお出かけが、楽しくないなんてもったいない)

「修平さん、教えてください。二ゲーム目は絶対にガターを出しません。百点も超えたいです。私を上達させてくれませんか?」

すると今日の外出で初めて、修平の口角が上向きになった。

「いいよ」

真琴の隣に来て投げ方や姿勢を指導してくれる声は、心なしか弾んで聞こえた。

「もう少し胸を張って。そう、そんな感じ。一、二の三で投げてみて」

修平の掛け声に合わせて投げたボールは緩やかな右カーブを描いて一番ピンにあたり、直後にすべてのピンが気持ちよく弾け飛んだ。

「ヤッタ! 修平さん、見てました?」

「ああ。ストライクだな。おめでとう」

「私、初めてです。嬉しい!」

満面の笑みを浮かべた真琴に向け、修平が両手のひらを掲げたので戸惑った。

「もしかして、その手はハイタッチしようということですか?」

頷いた修平がふたつ隣のレーンをチラリと見た。

「ストライクを出したら、やるものなんだろ?」
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