本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「ただいま」

「寝る前に会えて嬉しいです」

「なぜ?」

真琴にしたら当たり前の感情なのに、真顔で理由を問われて答えに困る。

「ええと、一緒に暮らしているのに一日の終わりに顔を見られないのは寂しいと思いまして。あ、早く帰ってきてと催促しているわけじゃないですよ。修平さんは夜遅くて、私は朝早い。それは仕方ないのでお互いに無理なく過ごしたいです」

「でも寂しいんだろ?」

「そうですけど、私はいい大人なので、そこを強調されると困ります。寝る前に会えてラッキーだと思った、くらいにしておきますね」

返事がないのは納得してくれたからだと思うことにする。

靴を脱いだ修平の邪魔にならないよう壁際に寄ると、彼が真琴の横で足を止めた。

その口角は片側がほんの少しつり上がり、なにかを企んでいるような気がした。

「寂しいなら、一緒に寝るか?」

「えっ」

グレーのハーフコートを着た片腕を真琴の後ろの壁に突き立てた修平が、十二センチ上から見下ろしてくる。

クールな瞳は蠱惑的に艶めいて、否が応でも真琴の脳裏に彼に抱かれた時の光景が蘇った。

修平とは体の相性がいいと感じている。
< 153 / 211 >

この作品をシェア

pagetop