本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
それは三日前の早朝のことで、真琴が寝ぐせを直そうとシャワーで髪を濡らし、バスタオルで拭いていたら、寝ぼけまなこの修平が洗面所にヌッと現れて危うく悲鳴をあげそうになった。

『びっくりした。修平さん、まだ三時半ですよ。見送りをしてくれるにしても早すぎます』

シャワーの音で起こしてしまったかと気にしつつ修平を寝室に戻そうとしたら、『天女』とポツリと言われて首を傾げた。

『今、なんて?』

『天女が舞い降りたかと思った』

(私のこと? もしかして、このバスタオルが?)

髪を拭いていた白いバスタオルが天女の羽衣に見えたのだろうか。

いや、いくら寝ぼけていても修平に限ってそれはない。

昔話と現実を混同させるようなメルヘンな思考を持ち合わせているとは思えなかった。

ということは天女というのは、修平なりのユーモアなのだろう。

先週はこんなこともあった。

その日は修平のみ休日で、真琴が仕事から帰宅すると彼は珍しくテレビドラマを見ていた。

退屈なのでニュースでも見ようとテレビをつけたらたまたま放送中だったそうだが、真琴が出演しているかと思って驚いたという。

『似ていたから、興味が湧いてそのまま見ていた』
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