本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
その女優は恋愛ドラマのヒロインのライバル役で出演していた。

結構知名度のある美人女優で、背が高いこと以外、真琴には類似点が見つけられなかった。

修平の目に自分がどう映っているのかと疑問に思いつつ一緒にドラマを見ていたら、修平が不機嫌そうな顔をして途中でテレビを消してしまった。

『少しも似ていなかった。真琴はあんな卑怯な真似をしない。あの女優には失望した』

ヒロインの恋路を邪魔する役だから意地悪な台詞を言っただけなのに、修平は明らかに怒っていた。

妻に似ているからと興味を持たれた女優は、妻が絶対に口にしない台詞を言ったからと嫌われた。

感情をわかりやすく表に出した修平に真琴は目を瞬かせ、同時に心の中で女優に失礼を詫びたのだった。

(冗談を言ったり感情を出したり、修平さんに人間味が感じられるのは嬉しい変化だ)

色気を消していつもの淡白な表情に戻った修平に、真琴は笑いかけた。

「夕食はおでんにしました。がんもどき、こんにゃく、牛筋、たこ足、はんぺん、餅巾着、色々と入っています。大根と卵は味がよく染みて美味しいですよ。ゆっくり召し上がってください。私は先に休みますね」
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