本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「すみませ......あ、生嶋先生」

修平と視線が合った直後に彼女が頬を染めるのを、真琴は見てしまった。

(あれ? もしかして......)

「すまない」

淡白に謝った修平に彼女はさらに顔を赤くしてから、ハッとしたように弁当とおにぎりを背後に隠した。

ミックスフライ弁当はボリュームがあり、それにおにぎりまで追加する大食な女性だと思われたくなかったのだろう。

それはおそらく、修平に心惹かれているせいではないだろうか。

この病院に勤めて日が浅い野々原は、修平が既婚者だと知らないのかもしれない。

(あ......だからか)

協力を求めた兄に修平が心電図を渡したことについて、真琴は納得していた。

野々原が自分に気があるのを修平は気づいていたのだろう。

もしかすると、なにかわかりやすいアプローチがあったのかもしれない。

だから彼女に確かめるまでもなく、『脈なし』だと兄に告げたのだ。

単にからかったわけではないとわかると真琴の心が騒めき立ち、不快感に襲われた。

(この嫌な気分はなに? 野々原さんは私を気遣ってくれて、花福の弁当も褒めてくれたいい人なのに......)
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