本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
守也と愛華のことでは二度助けられ、真琴の頑ななコンプレックスを壊してくれたことにも感謝している。

結婚生活を始めた五か月ほど前は不安や緊張が強かったけれど、クールで淡白な修平のわかりにくい笑顔や優しさに気づけるようになったら毎日が楽しくなった。

最近は仕事中でも修平のことばかり考えていて、すれ違いの生活の中で少しだけでも会話ができれば嬉しくて心が弾む。

彼に早く会いたいと願うこの気持ちは、まぎれもない恋なのだろう。

「気づかなかった......教えてくれてありがとう」

愕然とする思いでお礼を言えば、香奈がこらえきれないというように吹き出した。

「生嶋先生にも同じこと言われた。患者さんに対するそっけない態度を改めてほしいと言った時のことだけど。真琴と先生はお似合いかも。プロポーズされた頃に、うまくいかないからやめた方がいいと反対してごめんね。ちゃんと夫婦をやれてるみたいで安心した」

ホッと表情を緩めた香奈が、「食べなよ」と真琴の皿にすべての料理を取り分けてくれる。

(ちゃんと夫婦......には、まだなれていない)
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