本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
お互いに愛情がある状態が真琴の求める普通の夫婦像で、修平の人となりを考えると実現は難しい気がした。

それでも今は気づいたばかりの恋心にくすぐったい喜びを感じ、彼に会える明日を待ち遠しく思っていた。



それから二週間ほどが経ち、早朝からの勤めを終えて十六時に帰宅した真琴は、玄関ドアを開けて体を固くした。

今日は休みの修平が、椅子に上って玄関照明に手を伸ばしていたからだ。

「お帰り」

「た、ただいまです」

「電球切れてた」

「そ、そうなんですか。交換ありがとうございます」

冬物のベージュのコートの胸元を無意識に握り、速い鼓動を落ち着かせようとする。

(今日は普通に会話ができるように頑張ろうと思ったのに......)

修平への恋心に気づいてからというもの、どうしても緊張してぎこちない話し方になる。

こんなことを言ったら呆れられるだろうか、もっと好印象を持たれる受け答えをしなければ、などと考えてしまうからだ。

それで会話が続かない日々を二週間ほど送り、これでは修平との心の距離を縮めるどころか反対に離れていってしまうと焦り始めたところだ。
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