本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
(落ち着いて。過剰に意識しては駄目。リラックスして会話を弾ませないと......)

真琴が脱いだコートを玄関のコート掛けにかけていると、電球交換を終えた修平が椅子を下りて照明のスイッチを押した。

明るい中で彼の視線が自分に向いているのがわかり、落ち着くどころか緊張が強まる。

(なにか話さないと)

「お腹空いていますよね。すぐに夕食の支度を――」

「まだ夕食には早い」

「そ、そうでした。それじゃ私、お風呂掃除を――」

「さっきやった。真琴は休んでくれ」

「恐縮です」

不自然な受け答えに、修平が眉根を寄せて首を傾げる。

自然体でと思えば思うほどぎこちない会話になってしまい、真琴は心の中で慌てた。

顔は熱く鼓動は加速の一途で、いったん修平のそばを離れないと平常心を取り戻せないと考え脇をすり抜けようとする。
すると手首を掴まれて引き戻され、片腕に抱かれた。

もう一方の手は真琴の額にあてられ、「熱があるんじゃないか?」と心配される。

それほどまでに真琴の顔は紅潮しているようだ。

至近距離には端整な顔があり、大きく器用な手で背中と額に触れられたら、高みに上らされた今までの情事が蘇った。
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