本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
今日は修平の休日なのできっと夜はベッドに誘われるはずだと期待すれば、振り切れんばかりに鼓動が高まる。

「真琴、どうした?」

「あ、あの......離してください。熱はないです。体調もいいです。でも今は部屋にこもらせてください。すみません!」

早口で言って修平の手を振り払い、逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。

バタンとドアを閉めて胸に手をあて、速い鼓動と呼吸を落ち着かせようとする。

(どうしてこうなるの。修平さんにおかしな女だと思われてしまう)

修平の目に自分がどう映っているのかが気になって、ドアの向こうにたたずむ彼がショックを受けていることまでは想像できなかった。



それから三日が経った昼時、真琴は徳明会病院の一階で訪問販売中である。

いつもと違うのは修平が通りかからないかと期待してソワソワ落ち着かず、釣銭を間違えそうになったことと、隣で兄が客対応をしていることだ。

片思い中の看護師、野々原に会いたい兄が、父の制止を振り切ってついてきたのである。

真琴も修平のことばかり考えているため、浮ついた気持ちで仕事をしないでと兄に注意できなかった。
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