本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
レントゲンやCTなどの検査室前を通り、守也が足を止めたのはひと気のない通路だ。

救命救急センターと書かれた矢印が壁にあり、どうやら連絡通路のようだ。

話し声や物音もなく、やけに静かである。

向かい合ったはいいものの、困り顔の守也がなかなか話しださないので真琴から切り出す。

「今後についてって、どういう話?」

すると守也が意を決したように、大きく息を吸い込んだ。

「僕とやり直してほしいんだ。マコちゃんと別れたこと、すごく後悔している」

「えっ......九波さんは?」

愛華の姿も夏以降は見ていないが、交際は順調に続いているものと思っていたため驚いた。

守也は「フラれた」と自嘲気味に笑う。

「僕じゃ物足りないと言われて、三か月前に別れたんだ。今は来年卒業予定の医学生を追いかけてるみたい。気弱な子だから守ってあげないとと思わせられたけど、そういう性格じゃなかった。騙されたよ」

やっと愛華の本性に気づき、悔しい思いをして吐き出したかったのかもしれないけれど、振った元婚約者に愚痴を言うのはどうなのか。
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