本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
嘘ではないと思いたいがこれまでのような自然な笑顔を見せてくれず、緊張した顔でぎこちない受け答えをされ、手を振り払われたこともあったため嫌われたのかと不安に思っていた。

先週、不満があれば教えてほしいと話したが、『少しもないです。いつも一生懸命に働いてくださってありがとうございます』とお礼を言われた。

なにかしてほしいことや欲しいものはないかと聞けば、『十分にしてもらっていますよ。欲しいものが浮かばないほど贅沢な暮らしをさせてもらって感謝しています』と作り笑顔で返されてしまった。

自分に夫としての落ち度があったとしてもそれがわからず、挽回のチャンスも与えてもらえないことに困り、それが不調の原因だった。

「あの、生嶋先生。薬剤部から内線一番に電話が入っています」

声をかけられて振り向けば、野々原がそばに立っていた。

あからさまではないが、彼女が修平に気があるのは言動や表情から伝わってくる。

今も頬を染めていて、それを一瞥した修平は真琴がそんな風に思いを寄せてくれたらいいのにと考える。

(無理か。好かれるどころか、避けられているからな)
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