本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
野々原にそっけない返事をして受話器に手を伸ばし、内線ボタンを押した。

「生嶋です」

「薬剤部の菅内です。先ほど送られてきた処方箋についてですが――」

相手がやけに早口なのは緊張しているせいか、それとも早く電話を終わらせたいと思っているせいかもしれない。

菅内守也――真琴の元婚約者からの連絡に、修平の顔が無意識にしかめられた。

いい印象がないのは当然ながら、今は敵意さえ感じる。

その原因は三日前にある。

救急救命センターで処置を終えて医局に戻ろうとした修平は、自動ドアから連絡通路に出て話し声がするのに気づいた。

取り込み中のような会話の声が真琴に似ていたため曲がり角から顔を覗かせると、守也と向かい合っている姿に目を見開いた。

守也が復縁を迫っているような状況だと察して焦り、さらには――。

『マコちゃんは、生嶋先生が好きなの?』

そう問われた真琴が首を横に振ったのを見た瞬間、麻酔なしで心臓にメスを入れられたような痛みを覚えた。

精神的な強いダメージを受けると同時に納得もした。

(真琴が俺を避けているのは、そのせいか)
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