本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
この半年間、真琴が修平と心の距離を近づけようと努力してくれたのを感じている。

おそらくは頑張っても修平を好きになれないとわかって、結婚生活が苦しくなったのではないだろうか。

(真琴を楽にしてあげたいが、離婚する気はない。俺が真琴を必要としているからだ)

真琴が守也に婚約解消された時にこのチャンスを逃してはいけないと直感したが、それは正しかった。

修平のこれまでの人生はなにをしても満たされず退屈で、心にはいつも孤独を抱えていた。

それを嫌だとも苦しいとも思わないほど無感情に、ただ忙しさの中で月日を消費していた。

それが真琴と暮らすようになって安らぎや喜びを覚え、時には不安や焦りを感じることもある。

まるで灰色で空っぽの弁当箱に、色鮮やかな総菜が詰め込まれたような感覚だ。

真琴を失い元の弁当箱に戻るのを考えたら、微かな恐怖さえ湧く。

(真琴は俺の妻だ。この男には返さない)

守也からの連絡は修平が処方した血管拡張薬よりも他社の後発薬の方が安価なので、変えたらどうかという提案だった。

妻を奪うなと言いたいのをグッとこらえ、いつもの淡白な声で事務的に返す。
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