本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「その後発薬の使用中に全国で四件の不整脈の報告が上がっている。件数は少なく、まだ原因とは言い難い状況だが、九十代の患者だからなにかあれば命取り。処方は変えません」

「わかりました。その情報を知らず、余計なことをいいました。すみません」

謝罪の声に悔しそうな響きがあるのは気のせいか。

お互いに真琴の顔を思い浮かべて話しているのかもしれない。

「いや、気にしないでください。私が知らない情報をあなたが持っている場合もある。余計だと思わないので業務上の連絡は遠慮なくどうぞ。では」

返事を待たずに電話を切った修平は、無意識に大きなため息をついた。

するとポンと肩を叩かれ、顔だけ振り向けば関根が笑いながら立っていた。

先ほど外来に呼ばれていたが、診察を終えて戻ってきたところのようだ。

「修平でもため息をつくんだな。お前に限って仕事でつまずくわけないし、私生活の悩みか? 既婚者の先輩である俺が相談に乗るぞ」

心配ではなくからかいたいだけなのは表情からわかるので、肩にかかった手を払い落として「別に」とだけ答えた。
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