本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
修平にそっけなくされたら、大抵の相手は不機嫌にさせてしまったかとすまなそうにするのに関根はむしろ笑みを強めた。

腰かけた隣の椅子のキャスターを滑らせて肩をぶつけると、「別に」と修平の声を真似た。

「お前、上司にそれはないだろう。どこかの女優じゃないんだからさ。奥さんを怒らせたのか? 俺のアドバイスが欲しいだろ?」

「関根先生の助言は無意味」

関根のアドバイスに従っての豪華デートは失敗しているというのに、「まぁそう言うなって」と軽く流され顔を寄せられた。

一応、周囲を気にしてか、関根が声を潜める。

「特効薬があるんだ。喧嘩したら抱く、これだよ。女は可愛い生き物さ。耳元で甘い言葉を囁いて、ベッドでお姫様扱いすればすぐ笑顔になるから。やってみな」

「避けられているので無理です」

「えっ、マジで? 半年で離婚危機か。うーん、だが落ち込むのはまだ早いぞ。俺が回避方法を考えてやるから安心しろ」

(離婚......。真琴の心はその方向で決まっているのだろうか? 確かめたいが、聞けば墓穴を掘る展開になりそうだ。どうすればいい?)

その時、病棟の電話が鳴り響いた。
< 184 / 211 >

この作品をシェア

pagetop