本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
修平と関根が救急救命センターに駆け込んだ直後に到着し、救急隊員によって気管挿管と心臓マッサージをされた真琴が搬送されてきた。

鮮血に染まった花福のエプロンが負傷の大きさを物語っている。

「血圧、測定不能です。自発呼吸もありません」

救急隊員からの報告に「わかりました」と冷静に答えつつも、心の中は嵐のようだ。

青白い肌色でぐったりしている真琴は、これまでに出会った手の施しようのない患者と似た顔をしていた。

大声で名前を呼びたい衝動を抑え、看護師に指示を飛ばす。

「第一処置室へ。すぐに開胸する。麻酔と輸血、人工心肺の用意」

「はい」

今日の日勤の看護師はベテラン揃いだ。

一秒の無駄もなく瞬く間に手術の準備が整えられ、手指消毒した修平がメスを取る。

(医師生命をかけて必ず助ける)

他の手術でも手を抜いたことはなく全力を出しているつもりだが、ここまで強い救命の意志を抱いたのは初めてだった。

修平が真琴の胸を開くと、関根が呻くような声を漏らす。

心臓が破裂して血溜まりなっているのだ。

助けたくても不可能なのではという顔をされても修平の目は強い光を失わず、一時も手を休めない。

「関根先生、吸引」
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