本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
(怖がっていられる状況じゃない。俺しか真琴を――愛する妻を助けられる者はいないんだ。もし神がいるというなら、俺に妻を救える力を与えてください。どうか......)

真琴への深い愛情がしっかりとした形を持って胸に存在するのを感じていた。

誰かを愛したのも、神頼みをしたのも、両親を失って以来初めての経験だった。



深夜二時。ICUの照明は落とされることなく、看護師たちが患者のケアに忙しく動いている。

カーテンで区切られたベッドは二十台あり、その内の右奥から二番目のベッドに酸素マスクをつけた真琴が横たわっていた。

目を閉じている真琴を、修平と関根が傍らに立って見つめている。

「お前ってまさしく天才、いや鬼才だな。奇跡を見た気分だ」

疲労の濃い顔をした関根がそう言って修平を褒めた。

心臓破裂と大腿骨の骨折で救命率が十パーセント以下だった真琴は、修平の手術で一命を取り留めた。

心電図モニターの波形は縫い合わされた真琴の心臓の拍動で、今は安定したリズムを刻んでいる。

八時間を超える手術の後、意識も戻ったが、催眠効果のある痛み止めを使用しているため、すぐに眠りの中に引き戻された。
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