本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「妻の胸に容赦なくメスを入れられるのもすごいわ。俺には無理。鬼才を通り越して鬼だな」

それも褒め言葉なのだろうが、思わず横目で関根を睨む。

「怖かったですよ。俺も感情ある人間なので」

心を取り戻した今なら、そう言い切れた。

思いを言葉にして伝えたのが意外だったのか、目を瞬かせた関根が修平の心を知りたがった。

「それなら、オペ中になにを考えていた?」

答えようかどうしようかと迷い、真琴の救命に力を貸してくれた関根への恩返しのつもりで打ち明ける。

「両親についてです。俺が外科医の道を選んだのは、事故死した両親の影響かもしれないと考えていました」

ひとりで生きるのに都合がよかっただけで、なんの志もないと思っていたが、両親を助けたかったという幼き日の気持ちが無意識に職業選択をさせていたのかもしれない。

「そうだったのか......。色々と思い悩んで生きてきたんだな。サイボーグだなんて言って悪かった」

関根がすまなそうな顔をした時、真琴がゆっくりと目を開けた。

視線が絡み合い、修平の鼓動が跳ねる。

「それじゃ俺は帰るから。お疲れ」
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