本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
関根が気をきかせてカーテンの外へ出ていくと、真琴がなにか言いたげに口を開いた。

麻酔からの覚醒時には苦しげでまともに話せる状況ではなかったが、今なら少しは会話ができそうだ。

酸素マスクを半分ずらしてあげたら、まずは謝罪される。

「修平さんが手術してくれたんですよね? 迷惑をかけてごめんなさい」

どうやら夢うつつの中で、関根との会話を聞いていたらしい。

「いや、気にしなくていい。真琴は体を治すことだけ考えてくれ」

二か月ほど入院して治療とリハビリが必要だが、その後は普通の生活に戻れるだろうと完治までの経過を伝える。

「当分はベッド上安静だが、頑張れるか?」

「はい。修平さん......」

真琴が点滴の針を刺した右腕を、力を振り絞るようにして修平へと伸ばした。

両手で包むように受け止めたら、万感の思いが込み上げて鼻の奥がツンとする。

(まずい......)

真琴の前では頼れる強い男でいたいため焦ってナースコールのボタンを握らせると、酸素マスクも正しくあてがって背を向けた。

その頬に涙が伝う。

「今は夜中だ。もう少し眠るといい。なにかあればそのボタンを押してくれ」
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