本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「いえ、なんともないですけど......」

「それなら診なくていい。お疲れ様」

椅子から立ち上がった真琴は残念に思っていた。

今日は大人っぽいレースのついたライムグリーンの下着を身に着けている。

新調したばかりのもので、修平に見られると思って気合いを入れたのだ。

(がっかり......って、私はなにを考えているのよ。恥ずかしい)

欲求不満なのではなく、気になっていることがあった。

仲よく楽しく暮らし夫婦仲は良好なのに、修平がベッドに誘ってくれない。

最初は真琴の体調を気遣っているのだと思っていたが、元気さをアピールしても、寝支度をすませて修平と一緒にリビングを出ても、『俺の部屋で一緒に寝るか?』とは言ってもらえなかった。

(もしかして、大きな傷跡が問題?)

鎖骨の下からみぞおちまで縦に切開した手術跡は、生涯消えることはないだろう。

真琴自身としては不快に思わず、むしろ好意的に捉えている。

生きているのが奇跡的で、愛する夫に救われた証であるからだ。

(修平さんはもう私を女性として見られなくなったのかもしれない。恋愛感情がない上に欲情もしてくれなくなったら、この先どうなるんだろう)
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