本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
彼が夫婦でいることに耐えられなくなった先にあるのは〝離婚〟の二文字で、考えただけで真琴は胸が締めつけられた。

「ありがとうございました」

作り笑顔で挨拶し診察室のドアに手をかけると、修平に待ったをかけられた。

「早速、仕事に入りたいだろうけど、明後日の土曜は空けておいてくれ」

「なにか用事がありました?」

「その日は俺も休みだ。快気祝いも兼ねてデートしよう」

「は、はい!」

たちまち不安が吹き飛んで、真琴に自然な笑みが戻る。

香奈は口元に手をあててニマニマしており、恥ずかしくなった真琴はそそくさと診察室を出た。

心の中は早くも桜が咲いたようだ。

舞い上がるほど嬉しく浮足立っていたため、なにと快気祝いを兼ねてのデートなのか――ということまで考えが及ばなかった。



デートの日は快晴で風も弱く、柔らかな日差しが心地いい。

モカブラウンのシフォンワンピースを着てお洒落をした真琴は、スポーツカーの助手席でドライブを楽しんでいる。

ハンドルを握るのは白いボタンダウンシャツにグレーのジャケットを羽織った修平で、普段は車を必要としない生活をしているためレンタカーだ。
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