本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
久しぶりの運転だと言っていたが、スムーズなギアチェンジと車線変更で快調に走らせていた。

「修平さんは車の運転が好きそうですね」

気持ちよさそうな横顔に向けて声をかけたら、チラリと真琴を見てすぐに前方に視線を戻した修平がフッと笑った。

「どうだろう。わからないが今は楽しい。隣に真琴がいるから」

これには思わず顔が熱くなり、鼓動が加速する。

(まだ自宅を出て二十分。このくらいでドキドキしていたら今日一日、心臓がもたない)

彼に手術をしてもらった大切な心臓が壊れてしまわないかと心配していた。

都心から一時間ほどで海が見えてきた。

眩しい昼の日差しに水面がキラキラと輝いて、沖にはヨットが数隻浮かんでいる。

目的地は千葉県のとある総合公園で、白い砂浜が南国のリゾート地のように美しいとホームページに書いてあった。

「目一杯楽しんで、忘れられない日にしよう」

随分と嬉しい言葉をかけてくれると心を弾ませ隣を見れば、気のせいだろうか、修平の横顔は微笑んでいるのに寂しげな雰囲気がある。

なにか心配事があるのかと問いかけようとしたが――。

「真琴が行きたがっていた海辺のカフェにもうすぐ着くよ」
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