本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
白い砂浜を修平と並んでゆっくり歩いていると、砂に足を取られてつまずいた。

修平に左手を握られて支えられたが、真琴は体勢を整えたら慌てて手を引っ込める。

「大丈夫です。ありがとうございます」

恥ずかしかっただけなのに、寂しげに微笑んだ修平に「ごめん」と謝られてしまった。

嫌ではなく、むしろ繋ぎたい気持ちはある。

慌てて弁解しようとしたが、先に修平に話される。

「婚約指輪、つけてきたんだな」

「はい」

いつもは大切にしまっているダイヤの指輪を結婚指輪の上に重ねてはめてきて、修平は今、それに気づいたようだ。

贈ったものを相手が身に着けてくれるのは嬉しいと真琴なら感じるところだが、彼に笑顔はない。

「気を使ってくれたのか。俺が手術したから恩を感じているのかもしれないが、気にしなくていい。真琴には自由でいてほしい。指輪もつけたいものをつければいい」

「えっ......?」

修平が言わんとしている意味を理解できず、真琴は目を瞬かせる。

(修平さんは命の恩人ですごく感謝している。私にそう思われるのが嫌なの? 自由でいてほしいって、今は体を動かせるようになって不自由さを感じていないけど)
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