本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
(明るく振る舞ってくれたから気づけなかったけど、きっと私を重荷に感じていたんだ。それでも責任感から私を放りださずに、完治するまでそばにいてくれたのかも)

後悔に青ざめてももう遅く、これからされるのは別れ話だろうと予想した。

(修平さんはとっくに離婚の意志を固めていたというのに、ベッドに誘われないことを心配していた私はどれだけ鈍感なの......)

修平が夕日から真琴に視線を移して、フッと表情を和らげた。

「ありがとう。真琴のおかげで最近は仕事にやりがいを感じるんだ」

「え?」

離婚話をされると身構えていたところでお礼を言われたため、真琴はキョトンとする。

「私のおかげ......?」

「今までの俺はただなすべきことをこなしていただけで、患者に寄り添えなかった。だが真琴を手術してから変わった。今は必ず助けるという強い意志が自然と湧いてくる。患者が回復すれば俺も喜びを感じ、悪化すれば俺も苦しい。外科医は天職だ。もう二度と仕事中に退屈することはないだろう」

技術だけでなく志を持った本物の医師にやっとなれたと、修平は微笑んだ。

真琴も嬉しくなり笑みがこぼれる。
< 203 / 211 >

この作品をシェア

pagetop