本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
修平を困らせたくないからだ。

彼も沈みゆく夕日を眺め、しばらくはそれぞれの想いの中に沈んでいた。

(結婚してもうすぐ九か月。短いけれど色々あった)

愛華に絡まれていたのを助けてもらったことや、コンプレックスから解放してくれた時の言葉、クルーザーデートにボーリング、初めて体を重ねた時の戸惑いと喜びを思い出していた。

真琴の料理が好きだと言ってくれて、美味しそうに食べている彼を見るのが幸せだった。

もっと修平に料理を作りたかったと残念に思うのは、愛情を消せそうにないからだ。

「私......修平さんが好きです」

パンパンに膨らんだ恋心が口からもれる。

言ったところでどうにもならないのはわかっており、ほぼ無意識での告白だった。

「俺もだ。真琴を愛している」

修平もまた本心が口をついて出たような、意識していない言い方だ。

波が絶え間なく打ち寄せる。

三拍ほど置いて「えっ!?」という声が重なり、驚いた顔を見合わせた。

修平がこのような状況でからかうような性格をしていないのは知っており、混乱した真琴は体ごと彼に向き直って慌てて問いかける。
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