本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「あの、私が重荷で嫌になったから離婚しようと言ったんですよね?」

「違う。真琴を重荷だなどと思ったことはない。他になにもいらないほど愛しているから、解放しなければと思ったんだ」

いつになく焦った様子で弁解されても、真琴はまだわけがわからない。

「ちょっと待ってください。私にもわかるように説明してください」

気持ちを落ち着かせようとしてか、大きく息をついてから修平が話しだす。

驚くことに彼は真琴に好かれていないと思っていたそうだ。

そう感じたのは冬に入った頃で、真琴が修平への恋心を自覚して少し経ったくらいだろう。

意識しすぎて平常心で会話ができなくなり、照れくささから修平の手を振り払って逃げたこともあった。

それが修平を傷つけていたと知り、真琴は反省した。

(あの時は自分がどう見られるかばかりを気にして、修平さんの気持ちを考えられなかった。申し訳ない)

しかし決定打は、院内の連絡通路で守也に復縁を求められていた時の真琴の反応だという。

『生嶋先生が好きなの?』

守也の問いかけに真琴が強く首を横に振ったのを、偶然にも修平が目撃していたそうだ。
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