本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「真琴の命が助かるなら、他にはなにもいらないと思ったんだ。真琴に好かれなくても、信頼されなくてもいい。夫という立場もいらない。真琴の望むままに自由に生きてほしいと考えていた」

(そうなの。離婚しようと言ったのは、私を愛しているから......)

ようやく修平の心を理解した真琴はホッと緊張を解いた。

ふたりの安堵のため息が重なり、顔を見合わせて吹き出す。

「私たちはお互いに愛情があるのにすれ違っていたんですね」

「ああ。今後は疑問を感じたらすぐに話し合うようにしよう」

「ということは、離婚は?」

「しない。真琴は俺の妻だ。二度と離さない」

感情が豊かになった修平だが、照れるという思いは人より少ないのかもしれない。

まっすぐに目を見て真顔で告げた彼に真琴の方が恥ずかしくなり、ときめきと相まって耳まで赤く染まった。

(照れくさいけど、すごく嬉しい......)

いつの間にか夕日は沈み、空も海も濃紺色をしている。

桟橋はライトアップされて夜でも楽しめるようだが、海風の冷たさが増して人がかなり少なくなった。

「帰りましょうか」
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