本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
ブルッと体を震わせた真琴が爪先を砂浜へ向けると、修平に背中を抱きしめられた。

「その前に」

耳元で甘く囁かれゾクッとしたら、唇を奪われた。

数か月ぶりのキスに鼓動が際限なく高まり、寒さが吹き飛ぶほど胸が熱くなる。

体ごと振り向いて夢中で彼の背に腕を回せば、真琴より強い力で抱きしめ返してくれた。

(心が通じ合えて嬉しい。今やっと、本物の夫婦になれた気がする......)

頼もしい腕や温かな唇から修平も同じ気持ちでいるのが伝わり、真琴の目に嬉し涙がにじむ。

往路の車中で彼が言った通り、忘れられない日となった。



自宅に着いたのは十九時を回った頃で、昼間に海辺のカフェであれだけ食べたというのに空腹を感じた。

「修平さん、夕食になにが食べたいですか?」

冷蔵庫を開けて食材を確かめつつ聞けば、隣に修平が来て卵を指さした。

「卵かけごはん。お茶漬けでもいい。簡単なものにしよう」

「お腹空いていないんですか?」

「いや、空いてはいるが――」

その返事にかぶせるように修平の腹が鳴って、苦笑して頬を染めた彼を真琴はクスリと笑う。
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