本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「私が疲れていると思って遠慮したんですね。ありがとうございます。でも私は今、作りたくてウズウズしているんです」

離婚を告げられた時に、修平にもっと手料理をふるまいたかったと思ったのが原因だろう。

「実家からタラをもらったので、味噌漬けにしておいたんです。それを焼いて、里芋の煮物とごぼうの肉巻き、野菜たっぷりの味噌汁をつけて......あっ、明太子もたくさんもらったのを忘れていました」

餅を揚げて明太子ソースをかけるか、それとも大葉をたっぷりのせた和風パスタにするか、ポテトサラダに混ぜたり卵焼きの中にゴロッと入れても美味しい。

もちろんそのまま白いご飯にのせても最高だ。

相談をしているつもりが、口に出したメニューすべてを食べてもらいたくなる。

「全部作っていいですか?」

「真琴の料理はどれもうまいが、胃の容量は決まっている。明太子は卵焼きだけで頼む」

「ええっ、作り足りないです。私を妻に選んだんですから、もう少し胃袋を大きくしてください」

「無茶言うな」と額を小突かれ、同時に吹き出して笑った。

快晴の春空のように爽快で温かく、少しくすぐったい想いが真琴の胸に広がる。

この先ずっと修平の隣で、小さな幸せを積み重ねていきたいと願っていた。


【終】
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