本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
愛華も彼を下の名前で呼んいるのかと真琴は驚いて、押さえようとしてもさらに嫉妬の波が高くなる。

「僕はもう食べないよ。まだ食べていないマコちゃんに聞いてもらえると――」

守也がハラハラした面持ちで真琴を気遣ったが、愛華がそれを遮って攻撃的に声音を甘くした。

「串ものがいらないなら焼き魚にしましょうか。それとも一品料理はどうです? だし巻き玉子がありますよ。守也さん、この前、私のだし巻き玉子を喜んで食べてくれましたよね。また作りますね。この後、うちに来ます?」

(九波さんの家に行ったことがあるの?)

真琴はショックを受けて目を見開いた。

真面目で好青年の婚約者を疑いたくはないが、もしかして浮気なのではないかという疑惑を深めた。

すると守也がメニュー表を持ち上げるようにして顔を隠し、潜めきれない焦り声で注意する。

「そういう話は後で。マコちゃんが食事した後に、僕から話すという段取りを忘れたの?」

「ごめんなさい。でも私、不安なんです。早く言ってくれないと、胸が痛くて涙が出そう......」

「わ、わかったよ」

真琴は震え出した手をグラスから離して握りしめた。
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